中一のときの話。ある日曜日のお昼前、「同級生の佐々木」という奴から電話がかかってきた。当時同級生に男の佐々木は2人いたが、親から受け取った受話器から聞こえてきた声に聞き覚えがない。が、かなり馴れ馴れしく話してくる。俺の名前も知ってるみたいだが、こっちはどっちの佐々木かわからんので対応に困る。
なので「下の名前を言え」と当然たずねるわけだが、「わかるでしょ?」的なことを言ってはぐらかしてくる。「トモか?」「わかってるでしょ?」「しょーちんか?」「だからわかってて聞いてるでしょ?」
肯定も否定もしないのでいい加減イラついてくるが、こういうやり取りが数回続いてから自称佐々木は「お願いだから今から新城の西友に来て」とおもむろに言い出す。それについて「なんで?」と聞いてもまたはぐらかす。少し雨も降っていたし、もともと引きこもり体質の俺は休日は家から一歩も外に出たくない。得たいの知れない奴からの誘いにノコノコ行ってムダに時間をつぶされたくない。名前を聞いても西友に行かなきゃいけない理由を聞いてもあやふやな答えしかしてこないそいつだが、こっちが「行かない」と答えると「お願いだから!お願いだから!」とかなり切羽詰った感じで訴える。一体なんなんだ。
わけがわからないままだったが、結局あまりにしつこく来い来い言うので一応様子見がてら行ってみることにした。佐々木の正体も気になるし。雨は小降りだったが、チャリで西友へ。で、行ってみるとそこには田辺がいた。田辺は田辺で、俺と同じようによくわからない奴から呼び出されたという。が、俺と違うのは口調がかなり脅し文句に近かったということ。「来ないとぶっ飛ばす」と言われて来たらしい。しかも、その電話の相手が俺じゃないかと田辺の野郎は終始疑ってやがる。当然俺じゃねぇ。
1時間ほど2人で西友の屋上のゲームコーナーをうろついたりしながら待っていたが、結局誰も来なかった。誰かのイタズラだったんだろう、という結論になって帰ることにした。小雨もさらにゆるくなっていて、もうすぐ雨も上がりそうだった。俺のチャリが盗まれていた。
次の日、学校で2人の佐々木に「昨日、俺と田辺んちに電話した?」と聞いたが、当然2人とも答えはNO。そもそも声も喋り方も違ううえに、わざわざ電話で呼び出してまで遊ぶような仲じゃない。今になってもあのときのイタズラの相手が誰だったのかさっぱりわからんが、田辺はまだ俺が犯人じゃないかと疑ってるっぽいのがムカツク。
今もし同じように呼び出されたら、絶対に行かないと思うけどね。なんだか唐突に思い出したのでとくに面白くも無いけど書いてみた。誰かこのときの犯人、知りませんか?